年末に帰省した時に、祖父の部屋で見かけて、よっぽどもらって帰ろうかと思ったけど、買って自分のものにすることにした。
大江健三郎。初めて読んだ。
日本語が、まるで初めて読む言語みたいに、生き生きしている。
比喩、なんだけど、てんでバラバラな単語たちがわらわらと集まっているんだけど、集合すると完璧なバランスで、掛かる言葉へうまく繋がっている。
難しい、良さを、うまく言葉で表現できない。
分かりやすい比喩ではなくて、それどーゆー状況?って一旦想像しなくちゃいけないんだけど、そうすると焦点がきっちり結ばれる。
ものすごい人だ。なんで今まで読まなかったんだ。
この本は、作家自身が27歳の時に書かれた。バケモンだ。
しかもそこに至るまでに「人生の難所」を経験しているからこそ辿り着けたのだ。
学生の時に22歳でデビューしていると、人生のテンポが早いんだなあ。
精神が早く歳を取ってしまうのは、なんだか嫌だな。
まるで大江健三郎自身のような青年が主人公で、ダリウスと虎と鷹男と4人で過ごした失われた青春の美しさとそれが崩れていく様子を描いた小説だ。
4人で船に乗って大海原を旅するという美しすぎる夢もあったのに。
ダリウスが少年をレイプして日本にいられなくなり、虎は米兵に撃たれ、鷹男は女子高生を殺害して死刑になった。
美しいものは本当に儚くて、脆い砂の城みたいに崩れ出したら一瞬で跡形もなく消え去ってしまう。
青春の光は鮮烈で、記憶の中から消そうとしても消せなくて、いつも何かどこからか漏れ出していて、眩しすぎて真っ直ぐ見ることはできない。
崩れていく痛みは残酷で、骨や神経を夜毎ギシギシ締め付けてくるように、だんだん私を殺す。
そんな、誰にでも投影できそうなストーリーが、激しく歪んだ性の描写とともに描かれている。
激しく歪んで、も、いないのか。
彼らはただひたすら純粋で真っ直ぐだったのだ。
なんと大江健三郎、まだまだご存命というので、思いのほか現代の人なのだ。
それでも小説の中のカタカナで書かれている単語が、今の表現じゃないのがイカしてる。
たくさんの書物を書き続けているんだな。
もっと読もう。