本と映画と私

すぐに忘れちゃうから。

破戒 / 島崎藤村

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この小説の中で「破戒」という言葉が出てきたのは、あの一度だけだったと思う。

そうか、「破壊」ではないのだ。

父親の教えを、自らの意思で破ろうとした、あの瞬間こそが、「破戒」の瞬間だったのだ。

 

瀬川丑松は教師。穢多出身である。父親には、身分だけは絶対に隠せ、と言われながら、バレずに育ってきた。

住んでいた家から、穢多出身の大名が追い出される。それを見てビビった丑松は蓮華寺に引っ越す。愛読書は穢多出身を公言する作家。大ファン。

田舎の父が種付け牛に殺されたので、葬式のために田舎に帰る。そこで、同じ街の政治家と同じ電車に乗る。さらにその電車には敬愛すべき作家・猪子蓮太郎と一緒になる。

とても仲良くなる。

その政治家はひっそりと穢多出身の女を嫁にもらったらしい。その嫁が丑松のことを知っていて、穢多だとバレる。

蓮華寺に戻ってきた丑松。穢多だという噂が学校にも広まる。そんな中、蓮太郎は殺されてしまう。最後まで真っ直ぐでかっこよかった蓮太郎の死に様を見て、自分も穢多であることを隠すのはやめよう、と、破戒をする。

教師を辞め、もうどうにでもなれ、の精神で、生徒の前で素性を明かすのだが、なんだか男らしくない。穢多であることを誇りには思えず、自分を卑下しながら、隠していてごめんなさい、と土下座までするのだ。

違う違う、もっと、新しい時代らしく、胸を張って、自分はみんなと同じ人間なのだ、と開き直ってしまえばよかったのに。

染み付いた考え方なのだろうか。

そしてその後どうなるかというと、慕っていた先輩教師(酒呑)の娘さんを嫁にもらう約束をして、かつて家を追い出された大名についてテキサスに行く、という、急激なハッピーエンドで終わる。

最後のテンポ感が急に駆け足になる。それまでは、8割方、ただ淡々と、穢多という身分との戦いで、蓮太郎に、言うぞ、言えなかった、今日こそは言うぞ、やはり言えなかった、の繰り返しだったのに。

後書き、のように、北小路健「『破戒』と差別問題」という論文があって、これが非常に読み応えがあって、いろいろ考えさせられた。

そもそもこの『破戒』という本が出された時代の、「穢多」とか「部落」とかデリケートな言葉の扱い方の難しさ。

後になって藤村は「この小説はもはや過去のことになった」という序文を付け足したらしいが(この本にはなかった)、どんなふうに時間をかけて時代が変わっていったのか。

そういえば被差別部落解放、というので「水平社」なんて言葉を覚えさせられた、と、社会の授業を少し思い出したりした。

「えた・ひにん」なんて覚えさせられたりした。

そのふた文字には、こんな辛い一人の人生が、何万も、何十万も詰まっていたのか。

良くないよねえ。差別は。

2022年は全国水平社創立から100周年。

100年前の日本、かあ。

100年経っても、変わらないものもあるみたいだ。

隠し通しても、カミングアウトしても、どっちも辛いなんて、そんなの辛すぎる。

私だったら、産まないでくれればよかったのに、と、思ってしまう。

 

本当はもうちょっと文学的な感想を書き記したかったけど、率直な意見は以上。

 

確かに「破戒」として、教壇で生徒に詫びる丑松の言葉が、「そこかい」と思ったし、ロマンスも、急展開だな、とは思ったけど、それは割と後書き(付録)に引き摺られてしまったところはあるのかも。

おおむね、丑松が先にも進めず後にも戻れないような、ただ理想と現実の板挟みになって、それでもそれなりに上手に立ち振る舞って生きていく様に、希望を見出せたし、がっかりさせられることなく、最後まで、完璧とは言わずとも、上手に生きてくれてよかったと思ってる。

Our Father / 我々の父親

Our Father' documentary fathers horrifying true story - The Post

俄には信じ難い現実というものがあるんだな。

不妊治療の医者が、患者に自分の精子で妊娠させていた。

その子供の数は94人にものぼる。

一人の女性がDNA検査をして発覚した。

23andMeという企業を初めて知った。

アメリカ人はDNA検査が好きね。

「CMでよく見ていた」と言っているあたりもアメリカ人らしい。

不妊にも原因はいろいろあるんだろうけど。

もし精子に原因がある場合には、このケースのように、医者が自分の精子を与えることで解決するのだろう。

でも卵子とか卵巣に原因がある場合だってあっただろう。

卵管の詰まりを解決した?と言っていた気がするので、不妊治療に関しては、かなり有能な医者だったのだろう。

でもやはり、なぜ、そんな産めよ増やせよの信者になってしまったのか。

あの宗教が気になった。

Quiverfull(クイーバーフル)

ドクタークラインがこのカルト教なのかは謎なままだったけど、彼が敬虔なキリスト教信者であったのは間違いない。

やはり、敬虔なキリスト教で、白人で、銃を持つアメリカ人は、少し怖い。

そういう人たちがトランプを支持していたのだろう。

私にはあまり縁のない世界だなと思いつつ、実際にこんなことが起きている。

アメリカという国は、大きい、と感じさせられた。

Promising Young Woman / プロミシング・ヤング・ウーマン

プロミシング・ヤング・ウーマン考 - tunakorokkedayoのブログ

観てよかったあ。

映画館で予告見てから、絶対これいい、って思ってたもんね。

間違いなかったよ、私の勘は。

 

主演の女優(キャリー・マリガン)はデカプリオ版ギャツビーのデイジー役だったのか。

かわいいなあ。ギャツビーの時はサラッと流しちゃったけど、もう一度見てみたくなった。

かわいいのに、セクシーにもなれるし、かっこいいし、変幻自在な感じ。

とても魅力的。

彼女も、監督(エメラルド・フェネル)も、女性で、同年代で(85年生まれ)、だからセンスがピッタリなのよ。

途中でパリス・ヒルトン流れてきた時、めちゃくちゃテンション上がったもんね。

そして終盤、バチェラーパーティーに仕掛けに行く時の、クラシックのToxicも最高でした。

チョイスが、ドンズバすぎて、めっちゃ刺さった。

 

キャシーは医大生だったけど、退学してコーヒーショップで働いている。

大親友だったニーナを失ったことを引きずって、孤独に、実家暮らしの30歳。

コーヒーショップで医大の同級生と会い、付き合う。

裏でずっとキャシーは、クラブで酔い潰れたふりしてお持ち帰りされるたびに男性に制裁を与え続けてた。ニーナのため。

復讐劇は続く。

自業自得と言った女友達に復讐を。

助けてくれなかった(しかも忘れてる)校長に復讐を。

そんな中、付き合っている彼も、ニーナのレイプの現場にいたことを知る。

主犯である男はのうのうと幸せな結婚をしようとしている。

バチェラーパーティーにキャシーは乗り込み、主犯の男を傷付けようとする(ニーナの文字を彫ろうとした?)が、逆に殺される。

(めっちゃ衝撃だった。死んじゃうのか、、復讐成功しないじゃんって思った)

でも後悔して改心した弁護士を信じて全てを託し、キャシーの死後、全ての手筈は整っていて、警察は動き出し主犯の男はスムーズに逮捕。

元カレにも予約されていたメールがポロポロと届く。

 

出てくる男たちみんなムカつくし、もっとボロボロにしてやりたいと思ったけど、女にできるのはこんなもんか。

思ってたハッピーエンドじゃなかったけど、ちゃんとスッキリ終わった。

 

画がウェス・アンダーソンみたいにキレイで、ピンクと水色が美しくて、コーヒーショップの店内も売ってるお菓子も最高にかわいいし、ドラッグストアでパリス・ヒルトン聴きながら踊っているところなんてちょーキュートだった。

キャシーはピンクのジャージも似合うし、水色のワンピースも似合うし、リビングなんてパリスの家みたいで、監督の趣味かしら。

すごーく色がキレイな映画でした。

負けるな女の子。

ソロ活女子のススメ

ソロ活女子のススメ(BSテレ東)の番組情報ページ | テレビ東京・BSテレ東 7ch(公式)

「東京女子図鑑」みたいな感じかな〜と思って、軽い気持ちで見始めた。

私はもともとソロ活大丈夫なほうだし、気球とかやったことあるから、わかるわかる、と思って見ちゃった。

心の声とか、まさにそんな感じ。

江口のりこって知らなかったけど、良い女優ね。

柄本明と同じ事務所に所属しているんだね。

柄本佑の嫁の安藤サクラに雰囲気似てるよね。

サバサバしてて良い。

いろんなソロ活して、前向きになっていくので、ポジティブな気分になれる。

ソロ動物園とかソロ水族館は普通にしたい。

すぐ行きたい。

あと、ソロクルーズとソロフレンチは、やってみたいかも。

基本的には、飲食を楽しむ傾向が強いなと思った。

味に向き合う、みたいなの。

私はあんまり食事に関しては、無頓着で、何食べても美味しいし、なのでそんなにお金をかけなくてもいいやと思ってしまうし、探究心などゼロなので、今まで興味がなかったけど。

フレンチとかは、ああやって一人で食べたほうが、いろいろ気軽に聞けて、いろいろ教えてもらえていいのかもな。

お寿司屋さんなんて、別に私、好きなお寿司ないし、っていうか、別にお寿司好きじゃないしな、っていう感じ。

気球は楽しかったね。

オーストラリアの広い大地と空が見れた。

ひとりぼっちだったので、操縦していた人にあれこれ質問して、どういう理屈で気球が空を飛んで舵もハンドルもないのに行きたい方向に行けるか、なんてことを聞いたりした。

良い思い出。高いお金払って良かった。

写真も撮らないし、見返したりもしないし、私はソロ活向きなのだと思うよ。

 

GWに行った福岡で、終電を逃した友人が私のホテルに泊まりに来て、何気なくテレビをつけたらこのシリーズの2を放送していて、まさにさっきのバーでこのドラマについて話題にしていたので、「やってるじゃん!」ってなって嬉しかった。

そうか、2もあるのか。ちゃんと地上波で放送されてんだね。

見るの楽しみ。

 

そしてまさに、このソロ活の延長、みたいなことを、私はここ数日ずっと考えている。

目を閉じて、耳を塞いで、自分に集中するのだ。

自分と一対一で向き合って、自分に問いかける。自分で答える。

私が本当に好きなものは、食べたいものは、飲みたいものは、したいことは、欲しいものは、行きたいところは、なんなのか。

誰の目も、誰の意見も気にせず、本当に自分だけの欲求を追求したら、どこにたどり着くのか。

自分でも信じられないくらい、今までいつのまにか周りの声がうるさすぎて、自分の声に気付けていなかった。

無視され続けた本当の私は、いつの間にか叫ぶことをやめてしまったらしい。

なので、ここら辺でもう一度、しっかり私を取り戻すのだ。

本当にしたいことを思い出すのだ。

本当の私を取り戻すのだ。

Senior Year / シニアイヤー

NETFLIX「シニアイヤー」で流れる曲は? - 挿入歌ブログ

昨日公開だったらしくランキングに入っていたので軽い気持ちで観た。

そして最後の卒業式でティファニーが、もう無理!ってチアリーディングに参加するシーンで泣いてしまった。

 

コメディなので、細かいツッコミは置いておいて、物語がテンポ良く描かれていていい。

 

オーストラリアからアメリカに引っ越してきて、いけてなかったステファニーは一髪奮起して、イケてる女の子になる。

メイクも頑張って、チアリーディング部に入ってキャプテンになって、かっこいい彼氏もできて、もうすぐプロム。

近所に住んでいるOBのプロム・クウィーンはプロム・キングと結婚してとても幸せそうで、自分もそうなりたいと思っている。

なのに、プロム前のチアリーディングで落ち、20年間昏睡。

37歳で目覚め、失った高校生活を取り戻そうとする。

 

冴えない友達マーサは校長先生になっていたし、ステファニーに思いを寄せていたセスは図書館で働いていた。

そして憎きライバルティファニーは、なんとステファニーの元カレだったブレインと結婚していた!!

20年経つと高校生もガラリと変わっていて、LGBTも包み隠さず、みんな携帯電話を持って、SNSをして、好きな服を着ていた。

プロム・クウィーンになる夢を叶えて、その先の人生を考え始める。

みんな自分らしく生きれば幸せになれる、と。

 

つい昨日の思い出が20年前、なんて、まさに私。

留学生の時ジュニアだったから、もし私が今から続きのシニア始めるなら、ブリトニー聴いて、携帯のような電卓持って、アバクロとか着ていただろう。

分かりみが深すぎる。

Minding the Gap / 行き止まりの世界に生まれて

映画「行き止まりの世界に生まれて」オフィシャルサイト

スケボー映画好きなんだよねえ。

100%青春で、羨ましい。

ドキュメンタリー。

ラストベルトと呼ばれるイリノイ州のロックフォードで生きる3人。

スケボーを通して繋がった3人だが、そのうち一人はカメラマンであり監督なので、途中まではあまり出てこない。

失業率も多く、夢もない生活の中で、みんな闇を抱えている。

 

ザックはニコニコしてて、もし自分が男だったら懐いてしまうだろう。

ニナと若くして子供を作り、DVをして、別の女と出会い、離れていく。

高校も卒業していないらしく、まともな仕事にはつけず、父親として頼れるタイプでもないし、スケボーしたいのに、ニナばっかり飲み歩いてずるい、なんて思う、子供らしい人。

 

黒人のキアーは、父親から厳しく躾けられてストレスにもがいたが、ちゃんと自分で家を出て、自分の力で生活をしている。

スケボーのスポンサーもついた。

 

そしてそれをずっとカメラに収めているビンは、母親が再婚した相手からとんでもないDVを受け、トラウマを抱えている。

 

半分くらいまでは若者がスケボーしながら、その仲間と共に年を重ねていくだけなのだけど、ビンがだんだん闇に切り込んでいってからが面白い。

キアーの母親に新しい恋人ができたことを、立ち入りすぎ、と言われても聞く。

キアーの父親は死んでしまっている。

葬式以来だという墓地に行って、石碑の場所も忘れてしまったので、探しながら、やっと見つけた時には、うまく言葉に出来ず泣いてしまった。

 

ビンは自分の家に行き、腹違いの弟と会う。(DVをする父との子供)

父親のDVは弟にとってもトラウマになっていたみたいだ。

母親にも会う。逃げ出して、自分が見捨てられたような気になっている。

母親もまた弱く、声を上げられず、何が正しいのかも分からないまま、下手な英語で精一杯生きているようだった。

 

なぜザックはニナを殴るのか?そしてなぜニナは声を上げないのか?

この町から消えない、負の連鎖を嘆いているようだった。

 

スケボーがあったから、逃げ場もあったし、仲間もいたし、乗り越えられたのだろう。

そうじゃなかったらもっとやばい大人になっていたはずだ。

子供の世代は、そのまた子供の世代は、幸せになれるのだろうか。

 

ビンはスケボーしながらスケボーしている2人の動画を撮るのか?

それが一番難しくない?

堀米くんみたいな人たちが、そこらへんのストリートにわんさかいるんだ。

すごいなあ。

 

Puppylove / 青い果実

青い果実 - 映画情報・レビュー・評価・あらすじ・動画配信 | Filmarks映画

そして私はまたうっかり引き寄せられてしまうのであった。

14歳の女の子二人が、刺激を求めて危険をおかすエロスな映画とのことで、軽い気持ちで見たのに。

さすがフランス映画。

主人公のディアーヌ(ソレーヌ・リゴ)は、性に興味があって、彼氏もいるのに、彼氏は初体験をしてくれない。ポルノを見て、お風呂でオナニーする。

母親はいない、父と弟と仲良く3人暮らし。

隣に越してきたジュリア(オドレイ・バスティアン)は早熟で、メイクもするし、両親が嫌いで、英語も喋れるし、初体験も済ませ、男遊びもお酒もなんでも楽しむ。

そんなジュリアに導かれ、大人な世界を知っていくディアーヌ。

お酒を知り、男が危険だということも知り、男を知る。

でもまだ子供で、パパが大好きで、パパに彼女ができると嫉妬もする。

そのパパがね、クリスチャン(ヴァンサン・ペレーズ)なんだけど、ああ、なんでだろう、私が失恋したばっかりの人に似ていて、観ているとどんどん似てきて、たまらなく愛おしくなるのだ。

だから私の心はずっとディアーヌだった。大人になりつつあるディアーヌをかわいいな、と思って見つつ、パパのことを必要以上に大好きな気持ちが、必要以上に分かってしまったのだ。

あんな素敵なパパ。ちょーかっこいい。大好き。

なのにさ、ジュリアがパパに手を出すの。もちろん14歳の子供なんだから、酔っ払ってキスされて、ダメダメ、っていうパパの反応は、ちょーリアルで。

その時私の心はジュリアに捕らえられて、キスはダメだって言われてもめげずに、ベッドでパンツを脱いで、それでもno noって断られて、そしてめげずに、そんなにぐいぐい行けば、マジ?パパ手に入っちゃうの?っていう気持ち。

本当に?と思いながら、見入っちゃった。

これはもう武者小路実篤の『友情』を読みながら、野島の気持ちから急に杉子に希望を見出した時と全く同じなのである。

そして、結局パパとセックスしちゃうジュリア。わあ、まじか、あっぱれ、と思った。

展開のテンポが良くて、察したディアーヌは、二人がセックスしているところにツカツカ歩いて行って、パパの頬を打つ。

そしてまたこの時、気持ちがギューンと引き戻され、もっと客観的な立場から、あんなふうに誘惑されてセックスしちゃう男なんて大嫌い、というところに辿り着いたのだ。

ジュリアは悪くないのよ、そういう子だから。

私がディアーヌだったら、もう絶対仲良くはできないけど、彼女を責めることはできない。

パパのことかっこいい、好きって、言ってたし、なにしろ、ジュリアはそういうサガだから。

でもパパは、私が恋をしていた人にそっくりで、パパに迫るジュリアに自分を重ねていたし、なんだかパラレルワールドのありえたかもしれない現実を見たような気になって、そしてこの現実は、ああはならなくてよかったのかも、と思えた。

最後は、一人で飛び出して車通りの多い道を渡って死にそうになるディアーヌを、3人はただただ叫んで見守る。ディアーヌは轢かれなかったけど、道路の向こうからこちらを睨んでいた。

私がディアーヌだったら、ちょー荒れるな。

もう絶対元には戻れないくらい道踏み外すと思うよ。

パパのこと嫌いになれるだろうか?分かんないけど。

どうしてこんな、胸を締め付ける作品ばかりに引かれてしまうのだろう。

引力だ。神様のお導きだ。

私の心が切り刻まれるくらい、好きに切って。痛めつけてちょうだい。

この恋心をどうしたらいいのか、まだ全然分からないから。

もっとちゃんと教えてちょうだい。

友情 / 武者小路実篤

GWにひとり博多旅をするにあたって、この本を掴んでいった私がすごい。

あの旅はね、真っ直ぐ恋をした証であり、その恋を失う旅であった。

武者小路実篤」って、なんて仰々しい名前だろうと思って、難しそうだし、本当に食わず嫌いだった。

石原慎太郎とか、大江健三郎のように、「覚えなくてはいけない文豪」として名前を知ると、なんだかその後軽々しく手を出せずにいた。

米文学に転向してしまったし。

でも、もっと若いうちに読みたかったかも。

と、思いつつ、とんでもないタイミングで読めた。

 

実篤による自序があって、開始5行でネタバレしてるねんけど、これでいいの?

なんだか、悲しい終わりを見つめながら読み進めてしまった。

主人公の野島は杉子に恋をする。深い恋で、真っ直ぐに愛した。

その相談を大宮にする。一番の親友で、いつでもどんな時にも尊敬に値する。

そんな大宮が留学してしまい、残された野島は杉子に結婚を申し込むが、理由も不明なまま、頑なに断られる。

そして、留学先の大宮から手紙が届く。「雑誌に掲載される小説(?)を読んでくれ。そして僕たちを裁いてくれ」

ここで上篇が終わり、その小説(?)が下篇である。

小説というか、杉子と大宮の書簡のやりとりなのである。

大宮が一切手を加えなかったという、生々しいやり取り。

それによると、杉子は野島と出会う前から大宮のことが好きで、離れてしまっても、とても大好きで、野島に求婚されたがあんな奴キモくて無理で、本当にあなたが大好きです、あなたも私のことを好きなんでしょう、と。

最初は、野島はいいやつだ、彼との結婚を前向きに考えてやってくれ、と、しっかり断っていた大宮も、杉子にやられてしまう。実はずっと好きだった、でも親友が杉子のことを好きだと知ったから、身を引いたんだ、と言いながら、二人は結ばれてしまう。

ああ。

 

私は上篇を読んでいた時、本当に恋をしていたから、野島の気持ちが痛いほど分かった。

健気だけど、頑張ってるし、不器用だけど、でもうまくいってほしいと願いながら読んだ。

そして下篇になった時、杉子の意志の強さと自信と愛のまっすぐさにびっくりしてしまい、そうか、こうやって愛せば、私にも可能性があるのか?失った恋を取り戻せるのだろうか?という期待さえ抱いた。

杉子と大宮が結ばれたときは、あっぱれ、と思い、幸せな二人の生活を夢見て、ひどく羨ましく、頑張って手を伸ばせば私にも掴めるのかも、とまで思った。

 

でも、最後の一文を読んだ時、心がギューンと戻されて、私はやはり野島なのだと悟った。

 

「自分は淋しさをやっとたえて来た。今後なお耐えなければならないのか、全く一人で。神よ助け給え」

 

結局これは私の人生なのだ。私は野島で、決して杉子にはなれない。

 

そうして自序に戻る。

失恋するものも万歳、結婚する者も万歳。

 

でもねえ、実篤さん、失恋は辛いよ。

結婚も辛いのだろう。

どちらのほうが幸せで、どちらのほうが辛いなんて、私には決められない。

ただただ今は心が痛い。ひどく痛むよ。

 

野島がこの先ずっと一人でも、杉子じゃない女と結婚しても、大成すれば幸せじゃん、と思うんだけど、本人はそうは思わないかもしれないし、思うかもしれない。

分からない。

大宮は杉子と結婚して、その先、何か不幸なことがあるのだろうか。ないかもしれない。

杉子はずっと幸せだ。ずるい。

私は決して杉子にはなれない。

 

ああ、胸が痛いよ。野島みたいに人を愛することはできるけど、杉子みたいには愛せない。それは私のサガだ。辛いよ。

 

杉子の書く文章は、本当に、まじか、の連続で、そんなことを言ってしまうの?と、ただただ驚きで、全く同感はできなかったけど、野島の心の中には、私は、野島の心の中にはいたのだ。

 

いくつか引用しておく。

 

四より

彼は自然がどうして惜し気もなくこの地上にこんな傑作をつくって、そしてそれを老いさせてしまうかわからない気がした。

 

十四より

自分はどんなことがあっても杉子を失うわけにはゆかない。それはあまり残酷だ。自分を杉子に逢わした運命よ、お前に責任がある。

 

三一より

彼は杉子にいつまでも自分のわきに居てもらいたかった。しかし杉子が立ってゆく時が怖すぎるので、早くいい時に立って行ってほしくも思った。あまり幸福すぎる時、彼は一種の恐れを持つ。人間にはまだあまりに幸福になりきれるだけの用意が出来ていないように彼には思えた。生まれたものは死に、会うものは又別れる。そう云う思想は何時となく彼の心にも忍び込んでいる。

True North / トゥルー・ノース

TRUE NORTH

これはなんで観たのか、自分でもうまく説明できないけど、惹きつけられた。

アニメなんだけど、やけにリアルでびっくりした。

2020年の日本・インドネシア合作。

監督の実体験ではなくて、脱北者たちに取材をして作り上げたらしい。

 

北朝鮮のある家族。父親が外国関係の仕事をしているのか、英語を話せる家族。

仲の良い家族。仲の良い兄妹。

ある日、父親は政治犯の疑いで逮捕され、3人は強制収容所に送られる。

着の身着のままで出てきたのに、強制収容所近くの家に着いた時には、持ってきた食べ物も全て奪われていた。

訳も分からず、働かされ、ろくにご飯も与えられず、兄は毎日炭鉱の中で働かされたり、妹は革製品(?)を作らされる。

頑張る兄。たまにはずるいことをして、褒美にご飯をたくさん貰えても、母親にも妹にも冷たくされる悔しさ。母親も死に、残された兄妹。兄と仲の良い男友達。

3人で支え合いながら、近所の老人にも優しくして(ご飯をあげたり、薪をくべたり)、平和に過ごす。

そんな中、妹はアメリカ人にレイプされる。

キレた男友達はアメリカ人に手を出し、捕まる。(そこで家族の父にも出会う)

妹は妊娠する。男友達は、足を悪くするが、死なずに出てくる。

3人で逃げ出そうと企む。

そんな中、正々堂々と兄は北朝鮮に歯向かい、大混乱。そして妹はそれを「2人で逃げて」の合図だと捉える。

逃げた妹と男友達。子供も生まれ、その男友達は、立派な青年になり、今アメリカでTEDのステージに立っている。兄にはもう会えなかった。

 

淡々としているんだけど、リズム感が良くて、飽きないし、3Dアニメの仕草とは表情が生き生きしていて、目が離せない。

 

夕焼け小焼けの赤とんぼを歌ってた。

 

True Northは、コンパスの針がいつでも北を指すように、変わらない、正しい方向、生きる意味、ということらしい。

 

The Moleといい、本当にあの国は知れば知るほど謎が深まる不思議な国である。

Ocean's Eight / オーシャンズ8

オーシャンズ8 | 映画 | GYAO!ストア

最高。これを、GW前の、ちょうどメットガラの時期に(そういう内容とは知らずに)チョイスした私、最高。

オーシャンズ11は観たはずだけど、全然内容忘れちゃってたけど、大丈夫だった。

めっちゃ良い映画。

やっぱり強い女たち、最高。

 

ケイト・ブランシェットがクールに描かれていた。

金髪ボブも似合っているし、彼女の声はいつだって最高だし、服装と、住んでいる家がとっても素敵だった。

あんな、倉庫みたいな、1Rみたいな、だだっ広い部屋を購入したくなった。

「暖房代がかかって大変」なんて言ってみたい。

かっこよすぎ。あんまり目立たずに、サポート役に徹してて、犯行の本番も、厨房で仕切ってるのもかっこよすぎでしょ。

本当に大好きな女優。

彼女はプライベートでは、ものすごいハイヒール履いてても、いつも片手をポケットに突っ込んで歩いてる。

それがすごくかっこいいので、私も真似してる。

これから夏に向けて、アウターを着なくなるので、ボトムによってはポケットに手を突っ込めなくなることが、とても寂しいと思っている。

 

意外にサンドラ・ブロックの出ている映画をあんまり観たことがなかったようで、ピンと来なかった。

綺麗でかっこいいけど。

犯行の本番に、金髪だったのが、似合ってなかった。

 

アン・ハサウェイは、おバカな女優役で、なんかイメージそのまんまで面白かった。

最後までチームが7人のまま進むので、どういうことだろう?と思ってたけど、最後の最後で仲間になったのだ。

なんで犯行も終わろうとすることで仲間になるの?と思ったけど、彼女の功績が無ければこの犯行は成功しなかったわけで、一番仕上げの部分を綺麗にやり遂げてくれたのだから、お金は割り勘してもいいのだろう。

「友達が欲しかったんだもん」と言っていたのが、本音っぽくて可愛くてよかった。

あんな素敵なルー(ケイト・ブランシェット)の家で、女8人くつろげるなんて、最高じゃん。

 

観終わってから気が付いたけど、あのナインボール(黒人ハッカー)は、リアーナだったのね。

 

そして、デザイナー役のヘレナ・ボナム=カーター。

知ってる!ベアトリックス・レストレンジ!

 

犯行の時、なんでみんな着飾る必要あるの?と思った。

ゴージャスな映画だわ。

でもメットガラの中身があんなふうになってるって知れたので、とてもよかった。

面白かった〜!

また数年後のメットガラの季節に見よう。

女友達と。